【コラム】生命保険に申込する際の健康告知の必要性とは?
生命保険や医療保険などに申込するときは、ご自身の健康状態を正確に告知しなければいけません。正しく告知をしないと、万が一の場合に保険金や給付金が支払われない可能性があります。
健康告知の方法はさまざまですが、本記事では健康診断結果を用いた健康告知の必要性について解説します。健康診断結果に不安があっても加入できる場合もあるため、参考にしてください。
生命保険の健康告知とは?
生命保険への申込を検討する際、必要になるのがご自身の健康状態に関する告知です。健康状態をありのままに正しく告知しなければ、せっかく契約した保険が意味のないものになってしまう可能性があります。
法律でも定められている告知義務
生命保険加入時に必要な健康告知の方法には、以下が挙げられます。
- 保険会社所定の告知書
- 保険会社所定の面接士との面談
- 医師による審査
保険契約時における健康告知義務につきましては、法的にも以下のように定められています。
保険契約者又は被保険者になる者は、生命保険契約の締結に際し、保険事故(被保険者の死亡又は一定の時点における生存をいう。以下この章において同じ。)の発生の可能性(以下この章において「危険」という。)に関する重要な事項のうち保険者になる者が告知を求めたもの(第五十五条第一項及び第五十六条第一項において「告知事項」という。)について、事実の告知をしなければならない。(保険法第37条)※1
保険会社が告知を求めた事項にのみ回答する
保険申込時の健康告知で回答する内容は、上記条文にも記されている通り、保険者になる者(保険会社)が告知を求めたものに限定されます。
告知で問われる項目は保険会社や保険の種類によって異なりますが、主には以下のような項目があります。
- 過去5年以内に病気やケガで継続して7日以上の入院経験があるか?
- 過去5年以内に病気やケガで手術をしたことがあるか?
- 過去3か月以内に医師による診察・検査・治療・投薬を受けたことがあるか?
- 過去2年以内に健康診断・人間ドックで所定の臓器または検査項目で異常を指摘されたことがあるか?
- 視力・聴力・言語・咀嚼機能の障害があるか?
- 過去にがんまたは上皮内新生物にかかったことがあるか?
上記の項目に対し、はい・いいえで回答します。「はい」に該当した場合、治療歴・手術歴などの詳細を記載することもあります。なお、記録の必要があるため、保険会社担当者に口頭で伝えただけでは告知したことにはなりません。
また、健康告知には告知書を提出する方法以外にも、保険会社所定の面接士との面談や、医師による診査を受ける方法もあります。この方法の場合、医師に聞かれた過去の傷病歴について口頭で返答し、署名することで告知を行います。
正しく告知しないと告知義務違反になる
保険申込手続きにおいて、健康告知は正しく行わなければいけません。もし事実と異なった告知をし、それが発覚した場合には、保険契約が解除され、保険金や給付金が支払われない可能性があります。虚偽の告知は、保険会社が保険金や給付金の請求を受け付けた際、過去に同一の傷病歴がなかったかなどを調査することによって発覚します。
保険法第55条第1項では、以下のように定められています。
保険者は、保険契約者又は被保険者が、告知事項について、故意又は重大な過失により事実の告知をせず、又は不実の告知をしたときは、生命保険契約を解除することができる。※2
健康診断結果は提出しないといけない?
保険契約において健康告知は必須ですが、健康診断結果は必ず提出しなければいけないというものではありません。以下にて健康診断結果の提出が必要なケースについて解説します。
生命保険の保険金が高額になる場合
生命保険の保険金が高額になる場合は、健康診断結果の提出が必要になることが多いです。尚、保険会社や保険種類によって、健康診断結果が必要となる保険金は異なります。
保険金が少額の場合は告知書の提出だけで完結することが多いですが、保険金が高額になるほど保険会社の支払いリスクも増えるため、身体の状態をより詳細に確認する意味でも健康診断結果の提出や保険会社所定の面接士との面談、医師による審査などが必要になります。
健康診断結果を提出すれば保険料が安くなるケースも
保険会社や保険商品にもよりますが、健康診断結果を提出することで、月々の保険料が割引となるものや、喫煙者と非喫煙者で保険料が異なるものなどもあります。
健康状態に自信がある方は、加入を検討している保険会社や保険商品によっては割引を適用できる可能性があるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
健康診断で異常指摘があった場合は?
健康診断の結果、「要再検査」や「要経過観察」と診断された場合は、保険の申込を諦めなければならないのでしょうか。ここからは健康診断で異常指摘があった場合の対応について解説します。
異常指摘の場合は詳細を申告する必要がある
標準型の告知書には「過去2年以内に健康診断・人間ドックで異常の指摘を受けたことがありますか?」という項目があります。「要再検査」や「要治療」の場合、指摘内容や検査結果数値などの記入が必要です。「要経過観察」の場合も、検査結果数値を申告する必要があります。
まだ正式に病気と診断されていないからと、この事実を隠して告知してしまうと告知義務違反とみなされ、万が一の場合に保険金や給付金が支払われない可能性があるため、注意しましょう。
健康診断結果で「要再検査」の項目があった場合は、なるべく早く再検査を受診し、その結果を正確に告知しましょう。
健康診断結果で異常指摘があった場合の対処法
再検査の結果で健康上に何らかの異常があった場合に、保険に申込できないと諦めるにはまだ早いです。健康状態に不安があっても、以下の対応で保険に加入できる可能性があるため、しっかりと検討しましょう。
1.告知条件が緩和された保険に申込する
異常指摘によって通常の保険に加入できない場合は、告知条件が緩和された保険(引受基準緩和型保険)に申込する方法があります。
引受基準緩和型保険とは、保険会社に告知する項目が通常の保険と比べて少ない保険のことです。告知項目は保険会社によって異なりますが、以下のような内容です。
- 過去2年以内に入院、手術をしたことがある
- 過去5年以内にがんで入院、手術をしたことがある
- 現時点でがん、肝硬変と医師に診断または疑いがあると指摘されている
告知条件が緩和されており、持病があっても申込できるという点はメリットですが、その分保険料が割高になっているため注意が必要です。
2.健康診断の提出が不要な保険に加入する
健康診断で異常指摘があった場合は、保険会社に対する告知が必要ない保険に申込するという選択肢も考えられます。これは無選択型保険といい、健康状態の告知や健康診断結果の提出が不要な保険です。
持病があっても無条件で申込できるという点はメリットです。ただ、一定期間は一切の保障が受けられないという条件になっているケースが一般的です。
また、月々の保険料が引受基準緩和型保険よりもさらに割高に設定されている点にも注意しましょう。
3.特別条件付きで申込する
健康診断で異常指摘を受けている場合でも、保険金・給付金削減支払法や、特別保険料領収法など、特別条件付きで申込できる方法があります。
保険金・給付金削減支払法とは、保険会社が定める保険金削減期間内に死亡または高度障害状態となった場合に、設定した保険金額に一定の削減割合を掛けて支払われる方法のことをいいます。
特別保険料領収法とは、保険会社が定める特別保険料を、保険料の払込期間終了までの間、通常の保険料に上乗せして支払う方法のことをいいます。
特別条件付きでも通常の保険に加入できれば、引受基準緩和型保険や無選択型保険よりも、保険料を安く抑えられる可能性があります。
健康診断結果を提出する際の注意点
ここまで保険申込における健康告知の必要性について解説しました。最後に、健康告知において健康診断結果を提出する場合に注意すべき点をご紹介します。
健康診断結果には有効期限がある
健康診断結果には有効期限があります。保険会社によって異なりますが、告知日から遡って過去12か月から14か月以内に受診した健康診断結果を用いることが一般的です。それよりも以前のものは無効です。
健康診断結果を紛失した場合は再発行が可能
健康診断結果が手元に見つからない場合は、健康診断を受診した病院に連絡し、再発行を依頼することが可能です。
再発行には手数料がかかります。金額は病院によって異なりますが、一般社団法人日本健康増進財団では、健康診断結果の再発行手数料を1,100円と設定しています。
また、会社を通じて健康診断を受診している場合、企業は社員の健康診断結果を5年間保管しておく義務があります。勤め先の関連部署に連絡すれば再発行してもらえる場合もあるため、覚えておきましょう。
まとめ
生命保険申込時には、健康告知が必要です。法律上も告知義務があり、正確に告知しなければ保険金や給付金が支払われず、保険が役に立たなくなってしまう可能性もあるため、十分に注意しましょう。
また、保険会社や保険の種類によっては、健康診断結果の提出を求められる場合があり、その内容によっては希望する保険に申込できない可能性もあります。しかし、健康診断結果に不安がある方でも申込できる保険もあるため、保険会社や保険代理店で相談している場合は担当者とよく話し合い、自分の健康状態に合った保険を選択しましょう。
※1,2出典:e-Gov法令検索「保険法」