【コラム】住民税とは?地域によって金額が違うって本当?
住民税は地方税の一つで、一定以上の所得がある方は支払う義務があります。給与所得者の多くは給与から天引きされているため、どのように算出されているのか、どのような税金なのかを、普段あまり意識していない方も多いかもしれません。
そこで今回は、住民税がどのような税金なのかについて、納付対象の範囲や、地域差が生まれる理由を交えてご紹介します。
住民税とは
住民税は、個人の1年間の所得に対してかけられる税金で、その年の1月1日時点で住民票がある市町村に、6月から翌年の5月までの期間で納めます。
金額は、1月から12月までの所得額によって決定される「所得割」と、一律に課せられる「均等割」の合計額で決まります。
所得に応じて税額が変わるところなど所得税と似た要素は持っていますが、所得税は国に納める「国税」で、住民税は地方に納める「地方税」と納める先が異なります。
住民税は、教育、福祉、消防・救急、ゴミ処理といった、私たちの生活に身近な行政サービスの維持のために使用されます。
所得割と均等割(※1)
所得割は、前年の1月から12月までの所得に対して10%が課せられます。(市町村民税6%、道府県民税4% ※一部都市では市民税8%・道府県民税2%)
均等割は、住民税の位置づけが「地域社会の会費」であることが反映されたものとして、一律5,000円(市町村民税3,500円、道府県民税1,500円)※と定められています。
※東日本大震災を踏まえ、地方団体が実施する防災費用を確保するため、2014(平成26)年度から2023(令和5)年度までの十年間、市町村民税・道府県民税ともに500円ずつ引き上げられています。
道府県民税と市町村民税
住民税は、住んでいる道府県に支払う道府県民税と、市町村に支払う市町村民税の2つの合計です。
納税者が市町村民税と道府県民税を一括で納めると、そのうちの道府県民税が市町村によって、道府県に支払われます。
「個人住民税」(総務省)を加工して作成
道府県民税という言葉の中に「都」がありませんが、東京都は税法上の取り扱いが若干異なっていることから「都民税」と呼ばれます。市町村民税も、東京23区の場合は「特別区民税」と呼ばれます。(※2)
パートタイムでも住民税は発生する?
住民税はその年の1月1日時点で日本に住所があり一定額以上の所得があれば、原則すべての人が支払う必要がある税金です。パートタイムで働いていても例外ではなく支払いの義務があります。
ただし、所得が一定額以下の方は納税の必要がありません。
例えば課税される所得は、控除対象配偶者及び扶養親族がいない場合、住民税(所得割)の非課税限度額は45万円であるため、100万円以下で、パート収入以外に所得がない場合、住民税(所得割)はかかりません。(※3)
ただし、住んでいる市区町村によっては住民税(均等割)がかかります。詳細を知りたい場合は各市町村に問い合わせたほうが良いでしょう。
住民税の支払い方法とは
住民税の支払い方法は、一般的に会社員などの給与所得者の方とそれ以外の方とで異なり、以下の2通りの支払い方法があります。
- 普通徴収
- 特別徴収
1.普通徴収
住民税を納税者自ら納付する方法です。
個人事業主や、退職して次の就職先が見つかっていない方、転職先は決まっているがまだ普通徴収から特別徴収への切り替え手続きが完了していない方などが当てはまります。
普通徴収ではその年に納めるべき税額を一括もしくは一年間で4回(6月、8月、10月、翌年1月)に分けて、自治体から送付される納付書を使用して支払います。
2.特別徴収
会社勤めの方に原則適用される徴収方法です。
事業主(給与支払者)が従業員(納税義務者)に代わって、毎月の給与から住民税を天引きして納入する制度で、従業員は原則として一年間で12回に分けて徴収されます。
なお、給与所得以外に所得がある場合(副業等)も、副業分の確定申告時に特別徴収を選択することで、給与所得分に加算して納付できます。
住民税に地域差が生まれる理由
原則として、住民税の標準税率は地方税法によって定められるため、地域差はありません。
ただし、条例によって住民税は都道府県や市区町村の裁量で増減することができるため、地域差が発生する場合もあります。
例えば、宮城県では「みやぎ環境税」の実施に伴い年額1,200円、岩手県では「いわての森林づくり県民税」として1000円が加算されており、横浜市では「横浜みどり税」として900円上乗せされています。
このように超過課税があるため、収入などが同じ条件であっても、住む場所によって住民税額に差が生じます。
住民税の金額を確認する方法
住民税は前年の課税所得を基に金額が決定するため、収入の変動により金額が変わります。前年の1月~12月の間の所得が反映された住民税の支払期間は、6月から翌年5月までです。
ここからは、今後支払う住民税の金額を把握するために、下記2つの方法を紹介します。
- 住民税決定通知書を確認する
- 自分で計算する
1.住民税決定通知書を確認する
「住民税決定通知書」とは、決定した住民税の金額を通知する書類のことで、毎年6月頃になると自治体もしくは勤務先から配布されます。
手元に届いたら、記載されている住民税額で自身の納税額を確認することができます。
その際、本当にその住民税額で合っているのか、自分で計算することで、「所得」と「所得控除」の金額にも間違いがないか確認できます。※計算方法は後述
2.自分で計算する
住民税の計算は、以下の順番で行います。
課税所得金額:所得金額-所得控除額
所得控除とは、所得から差し引かれる金額のことです。扶養親族の有無、ケガや災害などによる出費といった個人的な事情を考慮して、課税対象者に応じた税負担になるように差し引かれます。
所得割額:課税所得金額×税率10%-税額控除額
税額控除額とは、税額から差し引かれる金額のことです。
ふるさと納税などの寄附をした場合や株式の配当などの配当所得があった場合、一定金額が税額から差し引かれます。
住民税額:所得割額+均等割額
算出した所得割額と均等割額の合計が、支払うことになる住民税額となります。
均等割には地域差があるため、正確な住民税を計算したい場合は、住んでいる自治体のポータルサイトなどを参照してください。
住民税を納付しなかった場合に起こるペナルティとは
会社員は住民税が給与から天引きされるため、納付を忘れることは少ないですが、普通徴収の場合は「うっかり忘れてしまった」ということがあるかもしれません。
その場合は、未納付分の住民税に「延滞税」というペナルティが科せられます。この延滞税は、滞納の期間によって加算されます。延滞に気が付いたらすぐに納付するのが賢明です。
住民税の納付を忘れたままでいると、自治体から督促状や催告書が送付され、それでもなお支払わなかった場合には、金融機関や勤務先、取引先に財産調査が行われ財産の差し押さえが執行されます。
納税を怠った場合には社会的な信用を失う可能性があるため、納付を忘れないよう準備しておきましょう。
まとめ
納税は国民の義務の一つであり、一定以上の所得がある場合には必ず納めなくてはなりません。
私たちが住民税を納めることで、行政サービスが維持されており、住みよい町を形成しています。
普通徴収の場合、給与天引きがありませんので、うっかり納付を忘れてしまった…とならないよう、注意しましょう。
なお住民税の納付は、2次元コードなどでスマホから支払える場合もあります。納付書が届いたらその場で支払うなど、納付を忘れない工夫が必要です。
また、住民税を支払えない事情があれば、早めに市区町村の税務課などへ納付期限の延長や分割払いなどの相談をしましょう。